自分らしいお産
ピースケを妊娠していたとき、突然切迫早産と言われて入院になった。
仕事も何もかもやりかけのままだったから、入院している間ずっと、やりたかったこと、できなかったことを考えてしまって辛かった。 母親学級にも行けなかった、ベビー服も何もそろえてない。 世間の妊婦さんができることが、私にはできない。 ちょうどそんなとき、ナチュラルな生活を志す知り合いの夫婦が、「自然分娩は素晴らしい!自然なお産で産まれた子供は、帝王切開や陣痛促進剤で産まれた子よりいい子が多い!」と言っていて、それがとても辛かった。 その知り合いの奥さんはその後妊娠し、臨月まで薪割りをして、毎日3時間歩いてとても頑張って、自然分娩でかわいい子を産んだそうだ。 そしてまた同時期に別の知り合いが、「バーストラウマ」とかいう変な思想を紹介しているのを読んでしまった。 当時は読むのがあまりに辛く、ほとんど記憶にないけれど、要するに、産まれた瞬間の記憶が怖いと赤ちゃんのトラウマになってしまうという考え方らしい。 早産だと死に対する恐怖があるとか、お尻を叩かれて蘇生されると、お尻を叩かれないと何もできない人になるとか。(なんて直接的、なんてばからしい!) でも、当時はそれらを馬鹿らしいと笑う余裕はなくて、毎日点滴しながら、ずっと怒っていた。 自然分娩の方がいい子が多いと言ったり、バーストラウマを紹介した知り合いはどちらも男だったから、自分で産みもしないくせに夢見てんじゃねえ、と、本当に本当に腹を立てていた。 でも、今は思う。 そう思いたい人は、別にそう思っていてもいい。 そういうことを信じる人たちで集まっていればいい。 私はそうは思わないから。 臨月で薪割りなんて、私にはできない。 それは、心がけとか努力でどうにかなるものではない。 私は、体は健康だけれど、妊娠については人とは違っている。 子宮外妊娠をしたから卵管も1本切ってしまっているし、子宮頚管無力症もあるようだ。 初めから、スタートする位置が違っているのだ。 それを思うと悔しい気持ちもある。 なんで私だけ、と思うこともある。 だけど、それが私に配られたカードなんだから仕方がない。 そのカードの上限いっぱいまで、頑張るしかないんだ。 今の私は、ほんとに上限ぎりぎりだ。 水曜日に大出血して、張り止めの点滴はMAX、体内のどこかで炎症もあるらしくて抗生剤も点滴している。 持病の喘息は腹圧がかかってよくないから、ステロイドの吸入も予防のためにMAX量している。 入院するまでは放射能を警戒して、西の野菜しか食べなかったけれど、病院食を拒否することもなく食べている。 ナチュラルなお産とはほど遠い。 でも、私は、そんな自分を誇らしく思う。 私は、自分にできる以上のことをやっている。 それだけは胸を張って言える。 誰にも文句は言わせない。 ちょっとオーガニックな雑誌や本を見ると、「自分らしいお産」とかいう言葉がよく出てくる。 助産院で麦飯を食べて薪を割って・・・というのから、高級フレンチを出す豪華産院だとか水中出産、無痛分娩だとか。 それぞれ、いろんな良さがあるんだろう。 何を選んだっていいのだ。 選べる人は、なんでもできるんだから。 私は、何も選べなかった。 選べなかったけれど、私はピースケのときも、そして今も、自分らしいお産に向かっていると思う。 自分らしさなんてそんなもの、極限状態になったら自然にわいてくるものだ。 選ぶんじゃなくて、滲み出るものなんだ。 私は、それに気づけて本当によかった。 人は、持ってるものが少ない方が、自分の道が見えやすいのかもしれないな。 たくさんのカードを持っている人は、選べるぶんだけ迷いも多くなるんだろう。 それはそれで大変なことだ。 「自分」を探したり、「自分」らしさを追求したり。 「自分」なんて、選びようもなくただあるものなのに、生きているだけで浮かび上がってくるものなのに、豊かすぎて情報に紛れてしまっている。 どんな道を辿ってもいい。 薪を割ろうがフレンチを食べようが、無痛だろうが水中だろうが切迫早産だろうが。 すべての妊婦さんは頑張っているし、どんなお産も尊い。 どんな道を選んだって選べなくったって、どんなお産も「自分らしい」と、すべての妊婦さんが思うことができますように。
by sima-r
| 2011-08-20 21:00
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るい 33歳女子。
<家族> 夫 (スペハズ) 息子(ピースケ) 猫 (おひげ) 今日のピースケ
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