凧になりたい
先生が、いつ産まれてもおかしくないと言うので、先生が帰ったあと、みっともなくワーワー泣いてしまった。
泣くとおなかが張るから、もう泣いてはいけないのだけど。 赤ちゃんのためにご飯を食べ、赤ちゃんのために眠り、赤ちゃんのために点滴をして、赤ちゃんのために生きている。 赤ちゃんに自分のすべてをあげたいと思っているのに、どうしても自分の側に残ってしまうのが、この、感情というやつだ。 うまく手懐けて、赤ちゃんにそうっと引き渡そうと試みているのだけれど、ときどき獣のように暴れ出してしまう。 入院してから、野坂昭如の「凧になったお母さん」という物語を何度も思い出していた。 燃え盛る空襲のなか子供に覆いかぶさって、文字通り汗と涙と、枯れたはずのお乳を我が子に塗って、子供を守ったお母さん。 あげられるものが何もなくなったとき、お母さんは全身の毛穴から血を噴き出して、我が子を猛火から守り抜いたのだ。 あのお母さんみたいに、私も赤ちゃんに自分の全部をあげたいな。 命なんて、もうとっくにあげてしまった。 あとは、この感情というやつだけだ。 これだけが、私は悲しみたいと、怒りたいと暴れるのだけれど。 これを赤ちゃんにあげることができたら、私はほんとうに奇跡が起こせる気がする。 命なんか感情なんか、全部赤ちゃんにあげて軽くなって、私は空だって飛べるんじゃないかと思う。
by sima-r
| 2011-08-19 11:59
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るい 33歳女子。
<家族> 夫 (スペハズ) 息子(ピースケ) 猫 (おひげ) 今日のピースケ
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